~モラトリアム期が長くなっている?~
「大人になるって、なんだろう?」
この問いはいつの時代も若者たちの胸に去来するものですが、近年、その「大人になるまでの時間」、いわゆる“モラトリアム期”が以前より長くなっているのではないかと感じることが増えました。
モラトリアムとは、本来“猶予期間”という意味で、心理学では青年期におけるアイデンティティ探索の猶予期間を指します。仕事、家庭、人生の選択をすぐに決めきれない時期とも言えるでしょう。昔は20代前半で社会に出て、自立し、家庭を築くというのが「当たり前」だった時代もありました。しかし、今はその道筋が多様化し、「自分らしい生き方」を模索する時間が自然と長くなっているように見受けられます。
その背景には、社会や経済の変化、職業観や価値観の多様化があります。正社員としての雇用が安定的ではなくなった一方で、自由な働き方や自己実現の形が広がっています。選択肢が増えた分、「何を選ぶか」に迷い、立ち止まる時間も必要になっているのです。
また、親世代の価値観とのギャップも無視できません。「早く安定しなさい」というメッセージは、時にプレッシャーになり、若者の自己否定感につながることもあります。
モラトリアムが長くなることは、決して悪いことではありません。焦らず、ゆっくりと自分の心の声に耳を傾けながら進む時間は、その後の人生を支える大切な基盤になります。「まだ決められない自分」も、「模索中の自分」も、ひとつの確かな成長の過程なのです。
私自身もまだなお長いモラトリアム期の最中と思う節もあります。今はまだ道の途中かもしれないけれど、それでも一歩ずつ進んでいる。そんな時間の中にも、ちゃんと意味があり、なにかが育まれていると信じています。
私たちは、「まだ決まっていない」ことや「まだ迷っている」ことを、そのまま受けとめる場所でありたいと思っています。
もし、今の自分に不安やもどかしさがあるときは、どうぞ一人で抱え込まずに、気軽に声をかけてください。

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