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2026.11.08ルックバック

藤本タツキさん原作の『ルックバック』

漫画を読み、アニメ映画を観て、そして先日(だいぶ前ですが)、実写映画版を観ました。

同じ物語を三度味わったことになりますが、飽きることは全くありませんでした。

それぞれの表現方法に違った魅力があり、実写映画版もまた、とても素晴らしい作品でした。

 

『ルックバック』の中心にいるのは、藤野と京本という二人の少女です。

性格も、学校での過ごし方も、人との関わり方も違う二人ですが、「漫画を描く」ということを通して出会い、お互いの人生に大きな影響を与えていきます。

この作品を観ていて改めて感じたのは、人間の成長には、テストの点数や偏差値のように数字で測ることのできない力がある、ということです。

いわゆる「非認知能力」と呼ばれるものです。

好きなことに夢中になる力。
うまくいかなくても、もう一度やってみる力。
自分より優れた人に出会ったとき、悔しさを抱えながらも努力する力。
誰かと一緒に何かを作る喜び。
そして、自分の世界の外へ一歩踏み出してみる力。

藤野と京本の二人を見ていると、そうした力が、人との出会いの中で育っていくことがよく分かります。

特に印象に残るのは、二人がひたすら漫画を描いている姿です。

何かに夢中になっている時間には、「これは将来何の役に立つのか」という問いは、あまり必要ないのかもしれません。

子どもでも大人でも、時間を忘れて何かに取り組んでいるときがあります。

絵を描く。
本を読む。
音楽を聴く。
スポーツをする。
何かを作る。
好きなことについて、ひたすら調べる。

そこには効率も、生産性も、他人からの評価もありません。ただ「好きだからやる」。

そういう時間は、人が生きていく上でとても大切なものだと思っています。

 

そして『ルックバック』は、単に「夢を追いかけることの素晴らしさ」を描いた作品でもありません。

人生には、自分の努力だけではどうすることもできない出来事があります。

「あのとき、こうしていれば」
「あの人と出会っていなければ」
「違う選択をしていたら」

人は大きな喪失を経験すると、何度も過去を振り返ります。

タイトルの「ルックバック」という言葉のように、私たちは生きている限り、時々後ろを振り返らずにはいられません。

けれど、過去を振り返ることは、必ずしも後ろ向きなことではないと思います。

自分が誰かと出会ったこと。
一緒に笑ったこと。
何かに夢中になったこと。
誰かに認めてもらったこと。
自分の存在が、知らないうちに誰かの人生を少し動かしていたこと。

そうした出来事は、たとえ時間が過ぎても、その人の中からなくなるわけではありません。

 

人生は、「何を成し遂げたか」だけでできているのではないのでしょう。

誰と出会い、何に心を動かされ、何に夢中になり、どんな時間を過ごしたのか。

その積み重ねそのものが、生きることなのかもしれません。

作品を観終えて、それでも最後に残ったのは、とてもシンプルな感覚でした。

何かを好きになること。
夢中になれるものを持つこと。
誰かと出会うこと。

そして、いろいろなことがあっても、それでもまた自分の机(私の場合、診察室の机になるでしょう)に向かうこと。

ともにふりかえり、ともに生きていけますように。