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2025.08.24分かち合い

クリニックを開業してからも、自院以外のお仕事で遠出することがよくあります。

長時間の通勤電車では本を読んだり、音楽を聴いたり、動画を見たり、たまに勉強したりします。

 

最近はメンバーと話題にしたNETFLIXのアニメ『タコピーの原罪』を観てみました。

※内容に触れるのでご注意ください

 

『タコピーの原罪』という作品には、痛みや孤独、そして人間関係のすれ違いが色濃く描かれています。特に主要人物である小学4年生のしずかちゃんやまりなちゃんの姿を通して、「誰にも理解されない苦しみ」がいかに人を追い詰めるかを目の当たりにします。タコピーというラッキー星人の可愛らしいフォルムや声に癒されながら、物語は少しずつ出口の見えないトンネルを進むように進行していきます。

 

その一方で、物語のなかでごく短い時間でも「気持ちを分かち合う瞬間」が訪れると、空気が和らぎ、登場人物の心に小さな光が差し込むことがあります。たとえば、最終話のシーンで、2人が互いにノートを見つめ、タコピーの絵を介して言葉を交わすシーン。そこには、長く続いた孤独に少しだけ風穴を開けるような“分かち合い”の芽生えが描かれていました。こういった物語を観る場合は登場人物に伴走するわけでもなく、疑似体験として没入するため、2人の涙と共に私も号泣してしまいました。

 

私たちの臨床の現場でも、患者さんが抱える苦しみは「他者と共有されないこと」で深まってしまうことが多くあります。「分かってもらえない」と思えば思うほど、人は心を閉ざし、孤立感が強まっていきます。逆に、「ほんの一部でも理解された」と感じるとき、心は少し軽くなり、次の一歩を踏み出す力につながります。

“分かち合い”とは、決して大げさな共感や完全な理解を意味するものではありません。小さな「うん」「そうだったんだね」といった言葉や、ただ静かに隣にいることも立派な分かち合いです。タコピーの物語が示すように、人は誰かと気持ちを分かち合うことで、絶望のなかにも希望の種を見つけられるのだと思います。

 

ちなみに、あのちゃんの曲もタコピーというキャラデザ同様に良かったですし、オープニングMVの2人の赤いリボンが、単なる装飾ではなく、物語を通して「繋がり」や「しるし」として生きていて(序盤は絶望的でしたが...)、終盤に再び重要な道具として回収されるのも考えさせられましたね。