中目黒の周辺を、時間があれば毎朝よく散歩しています。ときにはお昼ご飯を食べに行ったり、珈琲を買って戻ったり。そんな日常のなかで出会えた小さな出来事のお話です。
先日、たまたまですが旬のサンマを食べることができました。美味しかったので、骨だけがきれいに残るほど上手に食べられて、「苦手なこともやればできるんだ」とちょっと嬉しくなりました。今年は例年以上に秋を感じています。
秋刀魚のことを書き出すとどうしてもあの映画のことが連想されます、、、映画『秋刀魚の味』です。
小津安二郎監督の遺作『秋刀魚の味』は、淡々とした日常の中に人生の哀愁がにじむ作品です。小津映画はどれもこれも派手な出来事があるわけではないのに、秋刀魚の苦みや香ばしさのように、心に残る余韻があります。人の人生もまた、喜びと寂しさ、充足と欠落が隣り合わせに存在していることを思い出させてくれます。小津映画は定期的にリバイバル上映されるので、いつかまた映画館で観てみたいなと思います。
人生の価値は大きな出来事ではなく、淡々とした日常の中に宿るものかもしれません。五感でなにかを味わうひととき、ささやかな達成感や季節を感じる心を大切にすることが、メンタルヘルスにおいて大切です。診察室でのやりとりも、そんな余白を一緒に見つけていく時間でありたいと思います。