適応障害(適応反応症)は、はっきりとしたストレス因子に反応して、気分の落ち込み、不安、不眠、意欲低下などの症状が現れる心因性の疾患です。
「しんどい出来事があってから、徐々に心身の調子を崩してきた」、このような経過をたどることが多く、ストレス因子が軽減すれば、時間とともに症状も改善していくとされています。ただし、症状が強い場合には、休職・休息が必要になることも決して珍しくありません。
適応しすぎているという状態
臨床の現場では、適応できていないようには見えない方が、ある時点で限界を迎えるケースをよく経験します。キャリアがある、仕事もこなせている、人間関係も大きな問題はない。それでも、突然動けなくなったり、強いしんどさが表に出てくることがあります。その背景にあるのが過剰適応です。
適応には大きく二つの側面があります。
外的適応→周囲(親、教師、上司など)の期待や役割、ニーズに応え、社会的には問題なく機能している状態
内的適応→自分の気持ちや価値観、ペースに無理がなく、「これでいい」と感じられている状態
過剰適応とは、外的にはうまくやれている一方で、内側のしんどさが置き去りになっている状態を指します。我々日本人にはそういう価値観を持つ人は多いのではないでしょうか。
過剰適応は診断名ではありませんが、この状態が続くことで心身の消耗が進み、結果として適応障害として症状が顕在化します。
本人は限界まで頑張り続けているため、周囲からは問題が見えにくく、「ある日突然調子を崩した」ように映ることも少なくありません。しかし実際には、その前から無理が積み重なっています。
適応障害は、弱くなったから起こるものではありません。むしろ、これまで環境に合わせて懸命に頑張ってきた結果として、心と体が出しているサインであることが多いのです。
「まだ大丈夫」「自分が我慢すればいい」と感じているうちに、気づかないところで疲れが限界に近づいていることもあります。理由のはっきりしない不調や、これまでできていたことが急に難しくなった感覚があるなら、それは甘えではありません。
そして不思議なことに、、過剰適応をやめようとすると、今度は「ちゃんと適応できていない自分はダメなのでは」と不安になる。
ここに、矛盾があります。
頑張りすぎても苦しい。
頑張らなくても不安になる。
この世界は矛盾に満ちています。
だからこそ、白黒はっきりした答えではなく、“揺らぎながら生きていく力”が大切なのだと思います。
無理を続ける前に、一度立ち止まっても大丈夫です。少し話を聞いてもらうだけでも構いません。受診することは、弱さの証明ではなく、自分を守るための選択です。
どうか、自分を許してください。そして、少しずつでいいので、自分自身を愛していきましょう。

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