~人の強さと弱さはレコードのA面とB面のようなもの~
近年、「多様性」という言葉を耳にする機会が増えました。
もちろん多様性は大切な考え方ですが、その本質はもっと身近なところにあるのではないかと思っています。
それは、一人ひとりが持つ性格や特性を、その人らしさとして認めることです。
人にはそれぞれ得意なことと苦手なことがあります。長所もあれば短所もあり、強みもあれば弱みもあります。
得意なことや長所は、比較的わかりやすいものです。
自然と表に現れやすく、仕事の場面でも成果として見えやすいため、周囲から評価や称賛を受ける機会も多いでしょう。
一方で、短所や弱みはどうでしょうか。
誰しも自分の弱い部分を積極的に見せたいとは思わないものです。そのため内面にしまい込まれ、職場では「できないこと」や「苦手なこと」として捉えられてしまうことがあります。
私は、人の強さと弱さはレコードのA面とB面のようなものだと思っています。
A面には、人から見えやすい才能や能力、努力の成果が刻まれています。
一方のB面には、不安や苦手なこと、失敗の経験や傷ついた記憶が刻まれています。
けれど、A面だけのレコードが存在しないように、強さだけを持つ人もいません。
むしろ、その人らしい深みや温かさは、B面に刻まれた弱さや葛藤から生まれることも少なくないように思います。
だからこそ、本当の多様性とは、強みを評価し合うことだけではなく、お互いの弱さを認め合うことにあるのではないでしょうか。
誰かの得意なことが別の誰かを支え、誰かの苦手なことを周囲が補う。そんな関係性の中で、人は安心して自分らしく過ごすことができます。
心理学者のユングは、
「私たちは光だけでなく、闇によっても形づくられている」
という趣旨の言葉を残しています。
人は、才能や成功体験といった「光」の部分だけでできているわけではありません。
不安や葛藤、失敗や傷ついた経験といった「闇」の部分もまた、その人らしさを形づくる大切な一部です。
完璧な人はいません。だからこそ、お互いの違いを認め合い、支え合うことができます。
そして、自分の弱さを安心して見せられる場所があるからこそ、人は本当の意味で自分らしくいられるのだと思います。
当院もまた、一人ひとりの「光」だけでなく「闇」にも目を向け、その人らしさを大切にできる場所でありたいと願っています。
